アドバンテージと言えば実戦経験ぐらいのものなのだ。普段はそれが不利に働くが、かえで相手の场合は逆になる。かえでは総太郎以上に実戦経験に乏しい。
それを信じて前に出るが、かえではやはり自分から攻めてはこない。无理をせずとも総太郎が动いて隙を见せるのを待てばよい、そう判断するのが当然だ。
ならば、と総太郎はひとつ考えを持って、両足に鞭打って鋭く前にステップする。
「ふっ!」
右の突きから入る。カウンターを仕挂けてこないことは分かっているが、総太郎の攻撃を受けた后、その后の攻めを溃すように技を打ってくるはずだ。そんなことは総太郎の技が余裕を持って见切れるものだからできることだ。
ならば、その溃し技をあえて出させ、それにカウンターを合わせればいいのだ。溃し技を出させるには、技を出した后に隙を见せてやればよい。
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(とにかくまずチャンスを作る!)
総太郎の右の突きは当たれば逆転できるほどの威力が乗っていた。体から力が抜けているおかげで、かえって无駄のない动きになっている。
かえでから余裕を夺うためにも、この一撃は威力のあるものでなければいけなかった。かえでの余裕が失われるほど、総太郎の狙いに気づく可能性が低くなるのだ。
「うっ」
かえではびくりとしたようだが、それでも総太郎の突きを最小限の动きで避けてみせた。
「まだこんなパンチを打つ余力があったなんてね。でも、甘いよっ!」
そして、総太郎の体が流れると见てか、右の蹴りで反撃してこようとするのが见えた。
(よしっ!)
ここで総太郎は、この蹴りに左の突きを合わせる。はじめから右の突きは诱いだ。もちろん、相手を倒せるぐらいの突きでなければ钓りのための攻撃だと看破されてしまうので、威力のあるものでなければならないが。
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本命はこの左の突き。もちろん刹涡冲だ。あらかじめ缲り出すことを决めていた突きであり、かえでの蹴りよりも先に入るタイミングだ。接近戦を挑んでこないかえでに无理やりカウンターをかぶせていくためには、决め打ちにするしかなかった。
しかし――かえでは、蹴り足を止めて间合いを少し离した。
「なにっ!」
フェイントだったのだ。明らかに総太郎がかえでの反撃にカウンターを入れることを狙っているのを见切っていた。
间合いが离れては刹涡冲は正しく威力が発挥されない。离れた间合いを追いかけようとすれば踏み込みも腰も拳に乗らず、ただの流れるだけのパンチになる。
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